今野 敏

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警視庁FCシリーズ』とは

 

本シリーズは、警視庁内に設けられたFC室、つまりフィルムコミッション室に配属されたメンバーの活躍を描くシリーズです。

『任侠シリーズ』のようにユーモアに包まれた作品ですが、やはり

 

警視庁FCシリーズ』の作品

 

警視庁FCシリーズ(2023年05月30日現在)

  1. 警視庁FC
  2. カットバック 警視庁FCII

 

警視庁FCシリーズ』について

 

本『警視庁FCシリーズ』は、警視庁内に設けられたFC(フィルムコミッション)室に配属されたメンバーの活躍を描く警察小説シリーズです。

この「FC室」という特命班は、もと通信指令本部の管理官だった長門達男をリーダーとして、組織犯罪対策部の山岡巡査部長、交通機動隊の白バイ隊員である服部、都市交通対策課の島原静香、それに地域総務課所属の楠木(くすき)肇という五名で構成されています。

このメンバーのうち専任なのは長門だけであり、他のメンバーは兼務ということになっています。

 

そもそも今野敏の描く警察小説は、推理小説ではあっても謎解き自体には重きが置かれていないようです。

今野敏の人気シリーズの中でも一、二を争う『隠蔽捜査シリーズ』や『安積班シリーズ』であってもそうで、主人公の個性やチームとしての働きが魅力的なのだと思えます。

 

 

ましてや、『マル暴シリーズ』などになるとミステリーというよりは登場するキャラクターの動きそのものの面白さが魅力だと言い切ることができるでしょう。

 

 

そのことは本書『警視庁FCシリーズ』でもあてはまり、ミステリー作品ではあっても登場人物たちの会話や行動自体にその面白さがあると言えます。

FC室のメンバーたちを見ると、静香に思いを寄せているであろうことが見え見えで女好きの服部や、典型的なマル暴刑事である山岡の言動がユーモラスに描かれています。

また、本シリーズでは常に楽をすることを考えているキャラクターである楠木の、愚痴を挟みつつ、ひらめきをみせる捜査の様子が中心に描かれ、それを班長の長門が支えているのです。

特に、第二弾の『カットバック 警視庁FCII』では大森署を舞台としており、当然ですが大森署新署長の藍本小百合署長が登場したり、大森署所属の戸高刑事がFC室のメンバーよりも捜査員としての活躍が見られます。

 

このように、何らかの事件(第二巻まで出ている現時点では殺人事件)がおき、その事件をFC室のメンバーが解決していくという構造は普通のミステリーと同じです。

しかし、謎ときはあくまで二次的なものであり、本筋は今野敏が作り出したキャラクターたちが自在に動き回り、登場するユニークな人物たちと共に事件に立ち向かうその姿が魅力的だと言えると思います。

[投稿日]2023年05月30日  [最終更新日]2023年5月30日
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