木内 昇

イラスト1
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文庫

集英社

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新選組の主な構成員の夫々に均等に光を当て、短めの項立ての中で客観的に新選組を浮かび上がらせている、その構成にユニークなものがある、新しい新選組の物語です。

これまで良く知られている新撰組の物語ではあるのですが、特定の個人を取り上げて論じているのではありません。項毎に特定の人物の視点を借り、他の構成員や新選組の出来事をその人物の主観を通して描き出しています。つまり、視点を借りているその人物の内心を考察するのですから当然その人物像を詳しく語ることになり、且つその者の眼を通して他者を語らせることを繰り返すことで、結果的には様々なフィルターを通した新選組という組織の描写になっているのです。

勿論、山南敬助の脱走事件や伊東甲子太郎の「油小路事件」などの定番の事件も簡潔かつ丁寧に描写されており、エンターテインメントとしてのかたちも抑えてあります。前述の手法は、時代の変革期にその命をかけて生き抜いた若者たちの青春群像劇を際立たせることにもなり、こうした定番の事件もまた新たな視点で読むことが出来ました。

この作者の丁寧な文体はまた読み手にも優しく、実に読みやすい文章でリズム感がよく引き込まれました。特に項の終わりを現在形で止める文章は、単なるリズムだけでなく、読み手にとりその項の視座を持つ人物の心根に思いを馳せることになり、余韻を持たせて心地よく感じました。

本書で新しい解釈が為されているという訳ではありません。語られている事柄自体は通説的なことだと思うのです。それでも、なお実に新鮮に感じられ、評判もかなり良いことを感じます。面白い一冊でした。新選組という題材自体の持つセンチメンタリズムを越えたところで展開される本書は是非お勧めです。

[投稿日]2015年04月09日  [最終更新日]2015年4月9日
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