江戸時代、世の中が停滞してくると、公儀は年号を改めた。天保二年初夏、付添い屋で生計を立てる浪人・秋月六平太は、同居していた妹・佐和の再婚を機に、浅草元鳥越の一軒家から近所の市兵衛店に移り住んでいた。付添いで知り合った訳ありの未亡人の世話を焼いたり、長屋の住人のごたごたに巻き込まれたりと、落ち着かない日々に変わりはない。市中では、荒っぱい押し込み強盗が頻発していた。そんなある日、六平太の隣の部屋に、座頭の杉の市という男が引っ越してきた。「この時代小説がすごい!」2016年版第4位にランクイン。日本一の王道時代劇第7弾! (「BOOK」データベースより)
第一話 残り雁
六平太は、夕闇のなか三人の侍に襲われている男を行きがかり上、助けた。狙われた男は、大身の旗本、戸田左近家中の高山金之丞。高山は、女郎と心中した戸田左近の身代わりにされ、死んだことにされていた。
第二話 毒空月
大名家、旗本、大店に出入りする乗り物医師・志村了斎の付添いを請け負った六平太。了斎は溜まった薬代の片に商家の娘をを妾にしているという。そんな阿漕で意地の悪い了斎の乗り物が、子供達に襲われた。
第三話 強つく女
六平太は、小間物問屋「沢野屋」の女主、お寅の付添いを番頭の与左衛門から頼まれる。お寅の物に対する審美眼は確かなのだが、腕の落ちた職人に対して容赦がないため、ほうぼうで恨みを買っているというのだ。
第四話 長屋の怪
同じ長屋住まいの噺家・三治の顔色が良くない。訳を聞くと、神楽坂の料理屋で、偶然押し込みの密談を耳にしてしまい、以降誰かに付け狙われているという。折しも江戸では、荒っぽい押し込みが頻発していた。(「内容紹介」より)
付添い屋六平太シリーズの第七弾で、本巻からシリーズの第三部が始まります。
義妹佐和が火消しの音吉と夫婦となり、六平太も独り暮らしとなります。そこで、今まで住んでいた浅草元鳥越の一軒家から近所の市兵衛店へと引っ越し、新たな生活が始まるのです。
前巻で、六平太の想い人である髪結いのおりきの様子がおかしいと言われていましたが、本巻では家を出て行ったまま行方が分からなくなっています。代わりと言っていいものか、第一話で登場する高山金之丞の妻女が登場し、色を添えています。
特別に大きな出来事があるわけではないのですが、付き添い屋稼業の傍らで語られる人情話は心地よく、痛快小説としての小気味よさも持った小説としてお勧めのシリーズとは言えると思います。