梶尾 真治

イラスト1
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ながい髪に、印象的な瞳とそばかす。ジーンズをはき、E・Nとイニシャルを縫いこれまたナップザックをかかえた少女。彼女の名前はエマノン―四十億年分の記憶とともに生き続ける存在。彼女の身体の中には、『地球』とおなじだけの喜びや悲しみが積み重なっていた。人類の祖先をすくった意思を描く「さすらいビヒモス」や、化学兵器汚染地区での物語「まじろぎクリィチャー」などの五篇を収録。前作「おもいでエマノン」同様、鶴田謙二のイラストでおくるシリーズ第二弾。待望の初文庫化。(「BOOK」データベースより)

エマノンシリーズの二作目の連作短編小説集です。勿論、膨大な記憶を受け継ぐエマノンを巡る物語ではあるのですが、前作とは若干物語の構成が異なり、エマノン個人の物語というより、すでに起きている超自然的な現象を解決するためにエマノンが関わっていくという流れになっています。

「さすらいビヒモス」では町中で暴れる象、「まじろぎクリィチャー」ではアメリカのメイン州にある禁忌区に出現する怪物、「あやかしホルネリア」では意思をもった赤潮、「まほろばジュルバリ」ではアマゾンの乱開発現場の悪い精霊、「いくたびザナハラード」では人間を滅ぼそうとする超意識、といった超自然的な存在に対し、エマノンがその現象に対処するべく現れるのです。

結局は、物語の中では自然を越えた現象への対応が語られますが、それは人間の自然に対する敬意が無くなってきているところに起きる自然の反応であり、梶尾真治という作家の自然に対する姿勢が表れているのでしょう。

人間に対する自然の反抗というテーマはSFのジャンルでは結構普遍的なものとして在るのではないでしょうか。名作と言われる B・オールディスの『地球の長い午後』や日本では 貴志祐介の『新世界より(文庫版全三巻)』もそうだと言えるでしょう。共に、遠い未来の人類が衰退し、植物相が異常に発達していたり、動物が変な進化をしていたりする世界を舞台にしている作品で、共にアイディアというよりは物語の世界のイメージの秀逸さ、壮大さに驚かされます。

異常な植物相という点では、大人気の宮崎アニメの一つである『風の谷のナウシカ』の腐海のイメージなども同じと言えるかもしれません。そう言えばこの物語も人間の欲により一度は滅んだ世界が再度人間の欲により危機を迎えるという物語でした。

本書は、こうした自然と人間とをテーマに、タイムトラベルの変形というべき物語です。前にも書いたように、梶尾真治という作家のアイデアに満ちた小説です。

[投稿日]2016年12月22日  [最終更新日]2016年12月22日
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