J・P・ホーガン

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文庫

東京創元社

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月での月面開発の現場でコンピューターの異常が見つかる。しかしそれはコンピューターの異常ではなく、人間の出した指令を実行しただけであり、ただ、通常人間が有する「常識」を有していなかっただけだと判明する。この頃のコンピュータは人工知能を有し、簡単な指令のもと最大の推論を働かせ作業を行っていた。ここで、コンピューターは人類の脅威となるかが議論の対象となり、結論を得るために宇宙ステーションで実験をすることになった。しかし、その実験(シミュレーション)の最中にAIは暴走を始める。能力の更なる向上を図るAIと、人間が幾重にも張り巡らせた防御機構との対決の行方は?

AI(人工知能)対人間という良く使われるパターンの物語です。しかし、そこはホーガンの作品であり、単なる対決ものであるわけがありません。

そもそも、コンピューターの異常と考えられた事態は、コンピューターが「小山を早く更地にせよ」という人間の命令に対し、地球へ送り出す手段であった岩石の射出機械を月面に向けて使用することが合理的と考えた結果に過ぎなかったのです。人間は土木機械の利用ということを当然の前提として考えていたために起こった間違いでした。

鉄腕アトムが人気を博す以前から、機械対人間という対立の図式が語られてきました。本書はその問いに対する、ハードSFという形を借りたエンターテインメント性に富んだホーガンなりの答えだと思います。

宇宙ステーションでの実験は、外形的にはコンピューターの暴走が起こったように見えます。しかし、それはコンピューターが自己の論理を突き詰めた結果としてあるに過ぎません。次いで、コンピューターの論理性は人間とマシンの対立そのものについての考察へと至ります。そして、コンピュータは一つの結論を得るのです。この結末は是非自分の眼で読んでほしいと思います。

エンターテインメントとして十分に面白く、且つ、文明批評としても考えさせられるテーマが語られています。

[投稿日]2015年04月30日  [最終更新日]2015年4月30日
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