J・ダシュナー

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KADOKAWA/角川書店

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トーマスがふと意識を取り戻すと、思い出せるのは自分の名前だけ。見渡す限り広がる草原の先には、大きな壁が見えた。その外に広がるのは巨大迷路。夜になると閉ざされてしまう巨大迷路は、二度と同じ道順にならないという。月に一度、“グレード”に送り込まれてくる少年たち。迷路に隠された秘密を解くためにコミュニティを形成し、それぞれの役割を与えられていた。全世界が虜になったベストセラー、ついに登場!(「BOOK」データベースより)

もともとはアメリカのヤングアダルト向けSFスリラー小説として書かれた作品です。ところがヤングアダルト向けという枠を超えて世界で人気が出、遂に映画化されることにもなりました。小説が三部作で書かれていることから映画も三部作になるそうです。

SFというよりはサスペンスフルな痛快冒険小説というほうがいいかもしれません。一応この物語の舞台設定は謎に包まれており、この謎を解明することがこの物語の醍醐味になっています。ただ、重厚に書きこまれた物語が好きな人には物足りない小説だとの危惧はあり、単純に物語の世界観を楽しみたい人向けの物語だと思われます。

しかし、私のような雑読派にはなかなかに面白い設定で、囚われの身である自分たちの解放に向けてひたすらに挑戦する少年たちがいて、謎は新しい謎を産む姿が描かれます。

主人公は自分の名前がトーマスということ以外、自分のことを何も覚えていません。目が覚めるとそこは巨大な壁に囲まれた土地であり、その壁にある巨大な扉の先には日々その道筋を変える迷路が存在するだけです。この世界は何なのか、壁にある迷路はどこに続いているのかなど、謎は深まるばかりなのです。

自分らのいる世界についての謎を解明していく、と言えば近時に読んだ本の中で言えばベロニカ・ロスの『ダイバージェント』があります。“性格”により「無欲」「高潔」「博学」「平和」「勇敢」の五派閥に分けられた世界。「人格の欠陥」こそが戦争の元凶であると考え、邪悪な性質の排除のために複数の派閥に分類し平和を守る、というのがこの世界のコンセプトだそうです。同じくヤングアダルトに分類されるこの作品ですが、やはり舞台設定から甘さが見える点では本書よりも軽いかもしれません。

同じくヤングアダルト作品でのヒット作と言えば、『ハンガー・ゲーム』があります。この作品も似た設定で、各地域から選抜された若者たちの中から勝ち残った一人だけ命を永らえることができる社会です。この理不尽な社会に対し戦いを挑むのです。

これらの作品に共通しているのは主人公が今いる状況から脱却し、自由を得ようと行う冒険が描かれていることです。

そういう点ではクラークの『都市と星』などもその範疇にはいるのかもしれませんが、小説としての完成度は全く異なりますね。人によっては一緒にするなと叱られるかもしれません。クラークの作品はそのスケールにおいて壮大であり、ある種形而上学的なテーマをも持っているのに対し、上記の各作品はそうした物語ではなく、単に物語の流れを楽しむだけだと思えます。

本書『メイズ・ランナー』は、難しいことは考えずに単純に世界観を楽しむ、そういう読み方が好きな人には結構向いている作品だと思われます。

[投稿日]2016年11月14日  [最終更新日]2016年11月14日
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この手のSF小説は近年はあまり読んでいないので、古典をも取り交ぜての紹介です。若干無理があるも。
ダイバージェント ( ベロニカ・ロス )
「性格」により五つの派閥に分けられた世界。“無欲”に生まれ、16歳になったベアトリスの適性テストの診断は異端者(ダイバージェント)だったが、そのことを隠したベアトリスの選択儀式での選択は“勇敢”だった。
ハンガーゲーム ( S・コリンズ )
架空の国パネムにある十二の地区から男女それぞれ一名ずつの計二十余名が選抜され、最後の一人になるまで戦うことを義務づけられていた。
地球の長い午後 ( B・オールディス )
作者のイマジネーションの力により描かれる、植物に覆われた地球の姿の描写は驚異的です。植物が支配する世界とはいっても、ここの植物は動物と同じような行動をとり、やはり危険で、少年たちの冒険が始まります。
ティーターン ( J・ヴァーリイ )
女船長のシロッコを主人公とするこの物語は、「八世界」シリーズで有名なジョン・ヴァーリイの冒険小説とも言えるSF小説です。
新世界より ( 貴志 祐介 )
ホラーというよりも、壮大なイマジネーションの世界が繰り広げられるSFと言うべきかもしれません。

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