伊坂 幸太郎

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最強の殺し屋は―恐妻家。「兜」は超一流の殺し屋だが、家では妻に頭が上がらない。一人息子の克巳もあきれるほどだ。兜がこの仕事を辞めたい、と考えはじめたのは、克巳が生まれた頃だった。引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく仕事を続けていたある日、爆弾職人を軽々と始末した兜は、意外な人物から襲撃を受ける。こんな物騒な仕事をしていることは、家族はもちろん、知らない。『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる殺し屋シリーズ最新作!書き下ろし2篇を加えた計5篇。(「BOOK」データベースより)

 

2018年本屋大賞5位となった、超一流の殺し屋だが家では恐妻家の「兜」という男を描く作品です。

これまで伊坂幸太郎作品はあまり読んでこなかったので、この作家の作風がどのようなものだったのかあまり覚えていません。これまで読んだのは『ゴールデンスランバー』と『終末のフール』を読んだだけであり、ともに「うまい作家」という印象はあってもそれ以上のものではありませんでした。

しかし、この作家の人気は改めて言うまでもないほどに高いし、『Sweet Rain 死神の精度』や『重力ピエロ』など十本を超える作品が映画化され、またドラマ化、舞台化されているのです。面白くない筈は無いのは分かっているのですが、やはり私とは波長が合わなかった、というしかありません。

 

 

ところが、本書は少々異なりました。読み始めこそ若干の戸惑いがあったものの、読み進めるにつれこの物語の持つ奥行きの深さに引き込まれてしまったのです。

殺し屋が一般のサラリーマンとして普通の家庭生活を営んでいるという設定自体は、確かにあまり小説のテーマとしては読んだ記憶はありません。

 

ただ、コミックのテーマとしては似たものがあります。それは一つは新田たつおの『静かなるドン』という作品で、全108巻にもなる人気コミックです。このコミックは主人公がサラリーマンとしての顔の他に、広域暴力団新鮮組の総長としての顔を持つというものです。ギャグ漫画として描かれている作品ですが、妙に惹かれるものがある作品でした。

また、むとうひろしの『今日からヒットマン』という全31巻の作品もあります。こちらはひょんなことから伝説の殺し屋として生きることを選ばざるを得なくなったサラリーマンの物語です。最初の数巻しか読んでいませんが、この主人公が家庭生活を営みつつ、殺し屋として素人でありながらも裏の世界で名を上げていく過程がなかなかに面白い作品でした。

 

 

特に前者のコミックはギャグっぽい作品でもあり、そうしたコミック作品と文芸作品とを内容で比べるつもりはありません。ただ、舞台設定として似ている発想の作品として紹介したもので、そうした意味では特別目新しい設定とは言えないだろうということです。

しかし、裏の仕事では凄腕という男が一般人と同様な家庭を持ち、妻との会話には実に神経質になり、妻の言葉の裏の意味までも考えて波風が立たないように返事をし、日常の生活を送っているその姿はユニークです。

さらには、そうした恐妻家としての殺し屋が家族を思い、また友を思い、殺し屋としての立場を超えた行動をとったりと、次第に一流の殺し屋としての道から離れていく様は、その後の展開への関心を増すばかりでなく、物語自体への興味をも増幅させるものでした。

『グラスホッパー』『マリアビートル』に連なる殺し屋シリーズ、との紹介を読んだ以上はそれらの作品も読んでみる必要がありそうです。

 

[投稿日]2018年07月23日  [最終更新日]2018年7月23日
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