日残りて昏るるに未だ遠し―。家督をゆずり、離れに起臥する隠居の身となった三屋清左衛門は、日録を記すことを自らに課した。世間から隔てられた寂寥感、老いた身を襲う悔恨。しかし、藩の執政府は粉糾の渦中にあったのである。老いゆく日々の命のかがやきを、いぶし銀にも似た見事な筆で描く傑作長篇小説。(「BOOK」データベースより)
『蝉しぐれ』と並んで挙げられることの多い、藤沢周平の代表作の一つである長編時代小説です。
この本を読んだ後はこの作品の舞台となっている小藩は「海坂藩」のことだと勝手に思っていました。しかし、どうも明記されているわけでもなく、そうらしいというほかないようです。
主人公は引退した元用人で、例によって藩の紛争に巻き込まれていきます。
その人物造形が面白く、隠居爺さんと思ってたら五十代前半らしい。何と私より若い。それで、剣もそれなりに使え、体力が全くなくなっているわけでもない設定が腑に落ちました。