藤井 太洋

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新刊書

早川書房

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現代のインターネット社会のテクノロジーを駆使した、SFらしい作品です。

主人公は、Web上で流れ星予報サービスを運営する青年・木村和海(かずみ)。彼は近々流れ星になるはずの、イランの使用済みロケットが不自然な動きをしていることに気付く。その頃、民間宇宙旅行を主導するIT長者ロニー・スマークは、軌道ホテル滞在に向け、出発の準備を進めていた……。(「週刊文春WEB」より)

宇宙ゴミ(スペースデブリ)が宇宙開発に及ぼす影響については様々な個所で目にする機会があります。これまでに打ち上げられた人工衛星などの老朽化や故障・破壊などによる不要物がゴミとなって衛星軌道上を漂っていて、国際宇宙ステーションに衝突したりする危険性が現実にあるそうです。

こうした実情に目を向け、テロリストが宇宙ゴミを利用したテロを仕掛ける、というのが本書の骨子です。そもそも本書のタイトル「オービタル・クラウド」の意味がざっと辞書どおりに訳すと「軌道の雲」になるのです。

そこに利用される技術が「導電性テザー」という、わけのわからない代物です。「宇宙空間に長い紐を伸ばすことで軌道の変更や姿勢制御を行う」技術なのだそうです。(ここらを知りたい方は「ウィキペディア」を見てください。)これらに、スマートホンの基盤を利用するなどのアイディを加味し、いかにものSF小説に仕上げてあります。

主人公は、フリーランスの若者たちが集うシェアオフィスで、天才的なプログラマーである沼田明利らとともに活動している木村和海という青年です。テロリストの仕掛けた宇宙での罠を見破る和海とその仲間、そして彼らを助けるJAXAの職員、更に米軍やCIAのインテリジェンスのプロが彼らを助ける役割に回り、宇宙で展開されるスペース戦争の回避を目指します。

著者本人が「スリラーとして、広い読者を想定して書いた作品」と言っているように、冒険小説的な側面も多分にあります。ただ、逆に言うとそこらが少々安易に過ぎる印象もあり、違和感を感じる点でもあるのですが。

ただ、その違和感もあえてあげつらうほどのものでもなく、普通に面白い小説として読み進めることができます。現地に行かずにネット情報をメインに描いたというのですが、技術に関しては勿論のこと、舞台背景の描写のリアリティー十分に描いてあります。

[投稿日]2016年01月19日  [最終更新日]2016年1月19日
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