本書『ザ・キープ』は、ルーマニアのトランシルバニア地方を舞台とした吸血鬼の物語であり、長編の伝奇ホラー小説です。
若い頃に、かなり惹き込まれて読んだ記憶があります。
1941年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方。ドイツ軍に占領された中世の城塞に、ある夜、ただならぬ絶叫が響きわたった。地下室に駆けつけた兵士たちが見たものは、首を引きちぎられた仲間の無残な死体だった。さらに第2、第3の殺人が起き、恐慌をきたしたドイツ軍は、ユダヤ人の歴史学者クーザに調査を命じる。現場に残された古代文字を手がかりに殺戮者の正体を追うクーザの前にある夜、おぞましい異形の存在が姿を現わした。吸血鬼伝説とナチスの侵略という時代背景を巧みに融合させた伝奇ホラーの金字塔。(上巻 : 「BOOK」データベースより)
クーザに前に現われた吸血鬼モラサールは、自分に協力すればドイツ軍を皆殺しにしてやると取引をもちかける。ナチスを憎むクーザはモラサールの申し出を受けるが、その背後に隠された恐るべき奸計を知るべくもなかった。同じころ、クーザの娘マグダは、グレンと名乗る謎の男と出会う。城塞の内部を詳しく知るこの男は何者なのか?そして、父親を救出するために、マグダとグレンが城塞へと向かったとき、人智を超えた戦いの幕が切って落とされた。正統派ホラー小説の旗手ウィルスンの代表作。(下巻 : 「BOOK」データベースより)
第二次世界大戦時のトランシルバニアの古城に駐留したドイツ軍を襲う正体不明の存在に退治する主人公の姿が描かれますが、エンタメ小説として一級の面白さを持っていました。
本書『ザ・キープ』が属するシリーズは、以前はナイトワールド・サイクルと呼ばれていたと思うのですが、2020年の7月現在で本書のデータを見ると、「アドヴァーサリ・サイクル」シリーズと呼ばれているようです。
その「アドヴァーサリ・サイクル」シリーズの第一巻目である本書『ザ・キープ』は、伝奇ホラーの名作であり、D・R・クーンツやロバート・R・マキャモンの初期のモダンホラー作品群のように物語はテンポよく進むのですが、より落ち着いた雰囲気を持っています。
また、原作の雰囲気はあまり残されていなかった記憶はありますが、映画化もされています。
ただ、DVD日本語版は未だ出ていないようです。Amazon ではVHS製品だけ販売されていました。