浅田次郎

イラスト1
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新刊書

日本経済新聞出版社

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江戸城引渡しに備え、官軍入城に先立っての露払いとして尾張徳川家の徒組頭加倉井隼人が選ばれた。早速に江戸城西の丸御殿に行くと、待っていた勝海舟に打ち明けられたのは、未だ一人の侍が立退かずにいる、ということだった。外には官軍がひしめいており、官軍総大将の西郷からは「些細な悶着も起こすな」と言われているため、力を使うこともならず、途方に暮れるのみだった。

西の丸御殿に居座っている侍は何者なのか、という謎の解明だけで展開される上下二巻の大作です。的矢六兵衛という名前は分かっている、しかし、この侍は的矢六兵衛ではない、というところが不思議の発端で、加倉井は勝から紹介された福地源一郎と共に解明に動き出すのです。

事情を知るものへの聞き取りの度にその者の一人称の語りが挟まれるという浅田次郎お得意のパターンで物語は進み、少しづつ謎は解き明かされていきます。と同時に、浅田次郎の思う「武士道とは」という問いに対する答えも少しづつ示されているようです。先に寓意的と書いたのはこの意味でした。この作品全体として、浅田次郎の思う「武士道」が示されていると感じられます。

一方、この作品では江戸城についてのトリビアも示されています。江戸城開け渡しの時には本丸、二の丸は焼け落ちており、仮御殿である西の丸のみが再建されていことや、的矢六兵衛の属する書院番は由緒正しき近侍の騎兵であるとか、お茶坊主が何かと「シィー、シィー」と奇矯な声出すなど、数限りなくと言って良いほどに記されていて、この点でも興味を惹かれました。

蛇足ながら、私が読んだ新刊書版では、巻末に江戸城西の丸借り御殿の略図が載っています。この略図がまるで迷路なのです。この迷路の中で六兵衛はその位置を少しづつ変えていくのです

[投稿日]2015年03月22日  [最終更新日]2015年3月22日
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