浅田次郎

イラスト1
Pocket

文庫

新潮社

写真は Amazon にリンクしています。

楽天Booksは 楽天Books へ。


新選組三部作の第一弾で、ただひたすらに金に執着し、そして死んでいった新選組隊士吉村貫一郎の物語です。実在の人物ではあるらしいのですが、その詳細は不明で、後に子母澤寛(しもざわ かん)が「新選組始末記」で記した吉村貫一郎像をもとに本書で創作したものらしいです。

三部作の中では一番涙を誘われました。物語は史実を交えて進んでいくので、読後にはどこまでが史実なのか知りたくなり、吉村の子供が作り出したという寒さに強い稲は実在するのか等、実際に二~三の事実については調べた程です。

最初に主人公の吉村貫一郎が腹を切ることは読者には分かっています。その上で、腹を切るまでの吉村の回想による独白と、吉村貫一郎を知る新選組の生き残りの隊士を始めとする人達へのある人物の聞き取りとが交互に示される、という構成で物語は進んでいきます。ここで、聞き取りをしている人物の名前が明かされていませんが、読んで行くうちに浅田次郎は「新選組始末記」他を著した子母澤寛を思っていいたのだろうとに考えるようになりました。

ただ、語り手の一人に新選組生き残りの居酒屋主人がいるのですが、このモデルが分かりません。

各語り手の夫々の話が涙を誘います。それもピンポイントで心の涙のボタンを突いてくる感じです。特に後半の家族による語りの個所になると、更にいけません。この本は人前では読みにくい本だと、痛切に思いました。

実に読みやすい文章と、読み手の心をくすぐる舞台設定と、物語の世界に引き込む筋立てと、三拍子そろった面白い小説の手本のような作品です。殆どの人は面白いと思うのではないでしょうか。だからこそのベストセラーなのですから、改めて言う方がおかしいですね。

本書の終わりに大野次郎右衛門の手紙が漢文で掲載されています。私も含め普通の人は漢文の素養はなく読み下すことは出来ないでしょう。そこで、現代語訳されたサイトを紹介しておきます。くれぐれも本書読了後に再度の涙を覚悟の上で参照してみてください。現代語訳 大野次郎右衛門の手紙 参照

[投稿日]2014年12月25日  [最終更新日]2015年7月5日
Pocket

おすすめの小説

心に残る物語

読後に様々な形で心に染み入る物語を載せてみました。
小川 洋子
映画化もされた、記憶が80分しかもたない数学博士と、家政婦とその息子の心の交流が描かれている「博士の愛した数式」はゆっくりと心に染み入ります。第55回読売文学賞および第1回本屋大賞受賞作品。
対話篇」は人との対話を、「映画篇」は映画をテーマとして人との繋がりを描き出しています。読んだ後暖かな気持ちにさせてくれます。
佐藤 多佳子
噺家に成り立ての若者と、しゃべることに問題を抱えている登場人物たちのひたむきに生きる姿を描いた「しゃべれどもしゃべれども」がすずやかな涙を誘います。国分太一主演で映画化されました。
高田 郁
ふるさと銀河線 軌道春秋」は漫画の原作として発表され、人気を博した作品を小説化した短編集です。下を向いている登場人物たちに、明日への希望を示す物語集です。
夏川 草介
信州松本の勤務医である栗原一止の、内科医として患者に接するに日常を描いた作品である「神様のカルテ」は、第7回本屋大賞2位になった作品です。櫻井翔、宮崎あおい主演で映画化されました。
横山 秀夫
現職警察官の梶聡一郎がアルツハイマーに侵された妻を殺し自首してきた。動機については半分しか語らない。「空白の二日間」に彼は何をしていたのか。「半落ち」はそんな人間の本質に迫る涙あふれる作品です。寺尾聰主演で映画化されました。
半村 良
新宿馬鹿物語という副題のついた1975年の作品で少々古いかとも思いますが、人情味にあふれた名作だと思います。「雨やどり」は新宿裏通りの小さなバーのマスターの人情物語です。第72回直木賞を受賞しています。

人情小説のおすすめ

山本周五郎、藤沢周平といった大御所は除いています。
宇江佐 真理
ときにはコミカルに、ときには詩情豊かに人情を語るその文章は読み手の心を癒してくれます。中でも下っ引き伊三次と深川芸者のお文の物語である「髪結い伊三次捕物余話シリーズ」は、時代小説では一番好きなシリーズです。
杉本 章子
信太郎と引手茶屋の内儀おぬいとの暮らしを語る「信太郎人情始末帖シリーズ」は、捕物帖の香りがありつつも家族の人情話です。
山本 一力
骨太な文体なのですが、色々な職業の人物を主人公に据え、細やかに人情を語る手腕はさすがです。その直木賞受賞作である「あかね空」を始めとする作品は読み始めたらなかなか本を置けません。
梶 よう子
この人の書く侍は草食系です。「柿のへた 御薬園同心」の水上草介も剣の腕はからっきしで、「一朝の夢」の中根興三郎も朝顔のことは詳しくても剣はだめです。それでいて読み手の心を癒してくれます。
今井 絵美子
近年の作品はちょっと傾向が変わったようですが、「鷺の墓」などは軽く読めるかは別として、侍の静かな佇まいを淡々とした文章で描き出しています。
本

関連リンク

現代語訳・大野次郎右衛門の手紙  ~浅田次郎「壬生義士伝」より
本書の駄目押しです。このブログの管理人さんの労作をご覧になって下さい。
新選組の本を読む ~誠の栞~
新選組関連の本だけを纏められたサイトで、その量は凄いです。勿論浅田次郎の三部作についても書いておられます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です